オーストラリアには、親の海外赴任に同伴したり個人的に希望したりと、さまざまな理由で高校留学をしている日本人がいます。オーストラリアの高校留学を終えたあとは日本の大学へ進学する人も多くいますが、オーストラリアで高校を卒業していると一般入試ではなく「帰国子女枠」で受験することが可能です。
この記事では、オーストラリアの高校を卒業後の「帰国子女枠」での大学入試について、受験資格や受験の流れ、受験内容などについてご紹介していきます。
オーストラリア高校留学後の2つの進路
オーストラリアでの高校留学後の進路としては、主に二通りの選択肢が挙げられます。
①オーストラリア現地の学校に進学
まず一つ目は、オーストラリア現地の学校に進学するという道。オーストラリアの高校生は一般的に、Year12(高校三年生)の後半期に「High School Certificate(HSC)」と呼ばれる高等学校卒業認定試験を受験します。
無事に高等学校卒業認定を得たら、その後オーストラリア国内の大学や「TAFE」と呼ばれる公立の職業訓練学校、「college」と呼ばれる私立の専門学校のいずれかに入学します。
日本では、大学に入学するためには大学入試を受けなければなりません。しかし、オーストラリアの大学には「大学入試」というものが存在しておらず「High School Certificate(HSC)」の結果と高校の内申点によって合否が決められます。
②日本の大学に進学
二つ目が、日本の大学に進学するという道です。オーストラリアの高校を卒業している場合は一般入試ではなく、オーストラリアでの生活で培った英語力や、オーストラリアの高校生活で習得した知識やスキルなどを生かし「帰国子女枠」で入学することができる場合があります。
推薦入試やOA入試などの方法もありますが、帰国子女枠入試を行なっている大学は日本国内でも有名な大学である場合が多いため、特に人気がある受験方法です。
日本の大学入試の「帰国子女枠」とは
帰国子女と単身留学者の違い
「帰国子女」という言葉は有名ですが「単身留学者」という言葉には聞き慣れていない方が多いのではないでしょうか。留学経験がある方、留学中の方、留学を検討している方であれば、耳にしたことがある方もいるでしょう。
「帰国子女」というと「海外で長期滞在したあと、日本に帰国した人のこと」というイメージが強いですが、この点について言えば「単身留学者」にもあてはまります。
この二つの言葉の違いはというと、まず帰国子女は親の海外赴任に同伴する形で海外に長期滞在したのち、日本に帰国した子どもたちのことを指しています。帰国子女は「帰国生」と呼ばれることもあります。
一方、単身留学者というとその言葉通り「単身」で、つまり親の同伴ではなく個人的に留学(語学学校ではなく現地の学校)をした人たちのことを指しています。
単身留学生は帰国子女枠で受験できるか?
日本の大学入試には「帰国子女枠」というものはあっても「単身留学枠」と呼ばれるものはありません。それでは、オーストラリアの高校に単身留学した場合は帰国子女枠を利用することができないのか、と疑問に思うかもしれませんが、そういうわけではありません。
帰国子女枠という名称ではあるものの、単身留学者も受験資格にあてはまる場合があります。
あてはまる「場合がある」というのは、必ずしもあてはまるわけではないからです。日本の全ての大学・学部に帰国子女枠が用意されているわけではありません。帰国子女枠を設けるか、そして受験資格をどのように設定するかというのは、大学側の采配によるのです。
単身留学としてのオーストラリアの高校留学を終えたあと、日本の大学への帰国子女枠での受験を考えている方は、進学を希望している大学・学部での帰国子女枠の有無はもちろん、単身留学者も受験資格にあてはまるのかどうかも事前に確認しておく必要があります。
単身留学者でも帰国子女枠で受験できる大学例
国立大学 | 私立大学 |
---|---|
東京大学、京都大学(法学部のみ)、大阪大学、北海道大学、東北大学、筑波大学、和歌山大学、広島大学、山口大学など | 早稲田大学、慶應大学、上智大学、明治大学、国際基督教大学(ICU)、立教大学、法政大学、中央大学、同志社大学、立命館大学、関西学院大学、関西大学、津田塾など |
学部によって単身留学者の受験資格が変わる場合があるのでご注意ください。
帰国子女枠の受験資格を得るための3つのポイント
オーストラリアの高校留学後、帰国子女枠での日本の大学入学を考えているのであれば、一番気になるのはその「受験資格」についてではないでしょうか。受験資格を満たすことができなければ、当然受験もできないことになりますので、受験資格についてはよく調べておく必要があります。
もちろん大学によって異なりますが、一般的な帰国子女枠の受験資格というのは以下のようになります。
①オーストラリアの高校の在学期間
まずは、オーストラリアの高校に継続して在学していた事実があること。最終学年を含み、どの程度の期間継続して在学していたのかを証明する書類を用意しなければなりません。
在学期間は一年〜三年まで、大学によって指定期間が異なるので、確認しておきましょう。在学期間の証明書としては、卒業証明書(原本)を提出するのが一般的です。
しかし、オーストラリアの高校に在学していると、基本的に卒業する前に日本の大学入試が始まってしまう場合がほとんどです。そうすると卒業証明書を提出するのが難しくなりますが、その場合は卒業見込みであることを証明する書類を提出することで代用することができます。
②高校卒業後、大学入学までの期間
次に、オーストラリアの高校を卒業してから大学に入学するまでの期間が、指定期間を超過していないこと。これは大学によって異なりますが、一部の大学では高校卒業から大学入学まで一定期間(二年間としているところが多い)が空いてしまっていると、受験資格を失効とする場合があります。
特別な事情がない限り、日本の高校生と同じように、オーストラリアの高校を卒業したその年に大学入試を行うようにしましょう。
③日本の高校での在学期間
そして、日本の高校に在籍したことによる制限がかかっていないこと。オーストラリアに渡航する前、また帰国したあとに日本の高校に在籍したことがある場合は、注意が必要です。
いくらオーストラリア現地の高校に在籍したことがあるといっても、日本の高校に一年半〜二年半ほど在籍したという事実があれば、受験資格をもらえなくなる場合があるのです。
私立大学では日本の高校に在籍した過去があっても帰国子女枠受験を認めているところが多いですが、在籍期間に関する条件を設けているところがほとんどなので、よく確認しておきましょう。
以上の受験資格は、帰国子女と単身留学者のいずれもが対象となりますが、大学によっては「海外の高校留学の理由」について問うところもあります。この場合、単身留学者は除外され、帰国子女のみが受験資格を得ることができるのだと思っていてください。
日本の大学の帰国子女枠の受験の流れ
日本の大学の帰国子女枠というものは、一般的な日本人の高校生たちが受験する「一般入試」とは内容が大きく異なります。では、帰国子女枠の受験内容とはどのようなものなのでしょうか。
帰国子女枠入試は、まず書類審査から始まります。書類審査に通ったら、次は小論文の提出、そして英語力が試されます。
ここから先は文系学部を受験するのか理系学部を受験するのかによっても異なり、文系学部の場合は面接、理系学部の場合は理系教科の試験を受けたあとに面接を受けるという流れとなります。
日本の大学の帰国子女枠の試験内容
書類審査
帰国子女入試の一次選考である書類審査についてですが、受験者数が多い場合、オーストラリアの高等学校卒業認定試験「High School Certificate(HSC)」の結果や、オーストラリアの高校での内申点などによる審査が行われることがあります。
海外留学生の間では「一般入試よりも帰国子女枠が楽」というイメージもあるようですが、このように高校での成績や学習態度が合否に大きく関わることもあるのです。オーストラリアの高校に在学しているときから大学入試を意識し、日頃から真面目に勉強に励んでおきましょう。
小論文
小論文の提出については、日本語での提出を指定しているところがほとんどです。しかし、一部の大学では英語での提出を指定しているところもあります。
帰国子女枠というからには英語力が重視されると思われがちですが、実は「日本語」の表現力や「日本人としての」異文化理解なども求められているのです。
オーストラリアで長期滞在していると、自然とオーストラリアの文化には慣れていくでしょう。ですが、ただ慣れるだけでなく、日本人としての目線でオーストラリアの文化を理解しておく必要があります。
日本の文化とオーストラリアの文化を比較しながら自分の意見を述べることができるよう、日頃から「現地に住む人としての目線」とともに「日本人としての目線」を持って物事を見て考えるようにしておく習慣をつけておくといいでしょう。
面接
受験する大学が決まったら、日本で事前に各大学の過去問集などを用意し、その大学の難易度や出題傾向に慣れておきましょう。面接では、英語力よりもむしろ日本語力を見られます。小論文と同じように、日本人としての目線で異文化をどのように理解しているかを重視される傾向にあるようです。
文学部受験の注意点
文系学部を受験する場合、やはり日本語での表現力というものが必要となってきます。日本人で日本語ネイティブであっても、オーストラリアで長く生活していると、日本の教育を受けてきた日本人よりも日本語力が劣ってしまう場合があります。
語句や漢字などの知識、文章理解、要約力など、日本語ネイティブだからと気を抜かず、他の学生と同じレベルで学習することができる日本語力も身につけておく必要があります。
理系学部受験の注意点
理系学部を受験する場合は、数学や理科(物理・化学・生物・地学)などの理系科目の試験を受ける必要もあります。科目への理解はもちろんのこと、それぞれの科目の専門用語を日本語で理解しているのかどうかも見られます。
オーストラリア高校留学は帰国子女枠受験に不利?
オーストラリアに限らず、世界のさまざまな国からの帰国子女や単身留学者が受験する、日本の大学の「帰国子女枠入試」。どの国の高校を卒業していたとしても、帰国子女枠で受験する場合には当然受験内容は統一されていますが、実は一部で「オーストラリアからの帰国子女は私立大学の帰国子女枠受験に不利だ」と言われているんです。
というのは、日本の私立大学の入試が9月、10月頃に行われていることと、オーストラリアの高校の卒業時期が関係しています。
オーストラリアが位置する南半球の国の高校では卒業が11月末頃であるのに対し、アメリカやカナダ、イギリスなどの北半球にある国の高校では6月頃に卒業することができるため、大学入試までの期間をその準備のためだけに使うことができるのです。
その点、オーストラリアの高校に通っていると卒業よりも入試のほうが早いため、学校の授業と並行して入試の準備を行わなければならず、また在学中に学校を休んで大学入試のために一時帰国しなければならないという手間もかかります。
日本の大学の帰国子女枠を受験する際、高等学校卒業認定試験「High School Certificate(HSC)」の結果を提出しなければならないことがありますが、実はこの結果は入試前(9月〜10月頃)には返ってこないのです。
そのため、代わりとなる「Scholastic Assessment Test(SAT)」という大学進学のための共通試験を受ける必要があるのですが、これは元々アメリカの高校生が受ける試験なので、オーストラリアの高校ではSAT対策の授業が行われていません。
SATの準備も重なることも考えると、確かに不利だと言えるのかもしれませんが、オーストラリアの高校を卒業したあとに日本の有名大学に帰国子女枠で入学している人が多くいるのも事実です。
オーストラリアの高校を出たからといって、直接合否に関わるわけではありません。結局は自分次第ですので、直前に慌てなくてもいいよう、高校在学中から目標を持って計画的に準備を進めるようにしましょう。
まとめ
日本の大学入試の「帰国子女枠」について、また帰国子女枠の受験資格や受験の流れ、そして試験内容について、理解できましたでしょうか?
「一般入試よりも帰国子女枠のほうが簡単に大学に入学できる」というイメージを持つ人もいるようですが、帰国子女(または単身留学者)だからといって、必ずしも楽に入学できるわけではないということがお分かりいただけたのではないでしょうか。
オーストラリアの高校を卒業後に帰国子女枠で日本の大学への進学をお考えの方は、進学を希望している大学に帰国子女枠があるのか、そして受験資格にあてはまるかどうかを確認し、高校在学中から入試に向けて準備をしておきましょう。
弊社ではオーストラリア・アメリカ・カナダの高校留学を取り扱っておりますのでぜひお問い合わせください。