
これからオーストラリア留学を考えている方の中には、「どんなプログラムがあるんだろう」「現地での生活は大丈夫かな?」と不安に思う方もいるでしょう。特に海外経験が少ないと、数か月や1年以上など長い期間外国に滞在するにあたり、悩みもあるかと思います。
そこで今回は、オーストラリアの高校留学について、留学プログラムの内容や生活環境、留学後の進路などについて幅広く解説します。
オーストラリア高校留学の概要
まずは、オーストラリアの高校留学について概要を解説します。
1-1.オーストラリアの教育制度
オーストラリアの教育制度は、日本と同じ12年制です。しかし、日本のように小学校6年、中学校3年、高校3年と分かれているわけではなく、州によってシステムは異なります。
どの州でも、Year7~10を中等教育前期、Year11~12を後期にわけており、学生たちは後期から大学や専門学校などへの入学に向けて準備を始めます。
1年は、以下のように4つのタームにわかれています。
名称 | 期間 |
---|---|
Term1 | 1月下旬から4月上旬 |
秋休み | 2週間 |
Term2 | 4月下旬~6月下旬 |
冬休み | 2週間 |
Term3 | 7月中旬~9月下旬 |
春休み | 2週間 |
Term4 | 10月中旬~12月中旬 |
夏休み | 1か月半 |
履修科目は、以下のようなものがあります。
・英語
・数学
・地理
・歴史
・科学
・音楽
・コンピューター
・保健体育
・技術
・家庭科
・芸術
・演劇
このほかに、農業や工業に関する授業や、中国語やフランス語など外国語の授業も選択可能です。
また、オーストラリアにはガーディアンという教育制度があり、生徒の保護者や後見人になる人を指名する必要があります。ガーディアンは生徒が何かあった時に対応し、身近な相談相手として日々の生活をサポートします。基本的にはホームステイ先の方が担ってくれることが多いです。
1-2.留学のメリットと特徴
オーストラリア留学のメリットは、何と言っても治安のよさです。アメリカやイギリス、フィリピンなどでも英語を学べますが、銃社会であったり犯罪が多かったりと、現地での不安が大きいでしょう。オーストラリアは銃刀法が厳しく、現在政治的な不安定さがありません。
また、先進国の中でも教育レベルが高いです。2024年に発表されたQS世界大学ランキングでは、100位までにオーストラリアの大学が9校入っています。
さらに、留学生のための教育サービス(ESOS)法があり、教育サービスの品質管理が保証されています。留学先の高校の都合によりコースが提供できない場合、転校や返金などに対応してもらえるため、もしもの時にも安心です。
加えて、時差が小さい点も大きな特徴でしょう。日本にいる家族や友達と連絡が取りやすく、何かトラブルがあっても日本の留学エージェントとすぐにやり取りができます。
留学プログラムの種類

2-1.正規留学(卒業目的)
正規留学は、現地の生徒が通っている学校に同じ生徒として通います。決められた期間内に必要な授業を受けて、卒業することが目的です。留学生用の授業だけを受けるわけではなく現地の生徒と同じ授業を受けるため、高い英語力が求められます。
英語のほか、数学や音楽など、日本の学校に通っているのと同じように幅広い分野を勉強します。
2-2.交換留学(短期・長期)
交換留学は、政府や学校が主催するプログラムです。1か月程度の短期から1年などの長期まであり、現地で獲得した単位が日本で認定される仕組みもあります。正規留学に比べると、料金が抑えやすい点も特徴です。
ホストファミリーの家に滞在し、現地の学生と一緒に授業を受けます。そのため、日常的なコミュニケーションが取れるだけの英語力が求められます。
また、基本的には留学先の州や学校は選べません。
2-3.語学研修プログラム
語学研修プログラムとは、英語力を伸ばすことに特化したプログラムです。原則として長期休暇を利用したプログラムで、数週間程度の短期となり、費用がぐっと抑えられます。毎日英語の授業を受け、数学など他の教科を受ける機会は限られているため、現在の英語力が低くても授業についていきやすいです。
ただし、あくまで英語を伸ばすためのプログラムなので、そこで受けた授業を日本で単位認定するのは難しいでしょう。
留学先の選択
どのように留学先を選べばいいか、ポイントを解説します。
3-1.都市の特徴とおすすめ地域
オーストラリアの留学先としておすすめの都市は、ブリスベンです。
国内第3の都市で、日本人が少ないため「せっかく留学したのに日本語ばかり話してしまった」という失敗をしにくいでしょう。ブリスベン川のほとりは市街地が広がり、日々の生活で困ることはありません。郊外には国内最大のコアラ保護区があり、豊かな自然も楽しめます。
次におすすめの都市が、シドニーです。
オーストラリア最大の都市で、経済や文化の中心となっています。アジアだけでなく世界中から留学生が集まっているので、国際交流できる点がメリットです。週末にはビーチを楽しめ、一年を通じて晴れる日が多く過ごしやすい環境です。
最後に、パースもおすすめの都市です。
西側を代表する街で、最近では移民を受け入れていることから人口が増えています。中心地は高層ビルが並んでいますが、少し離れると開拓時代の建物も残っており、古き良きオーストラリアの雰囲気を楽しむことができます。
3-2.公立校と私立校の違い
オーストラリアの高校は、州立学校と私立学校に分かれます。
州立学校は学費が安く、入学テストは原則としてありません。ほとんどが共学で、無宗教です。私立学校の生徒に比べると庶民的な家庭が多く、日本で平均~やや高収入世帯の生徒が入学しても馴染みやすいでしょう。一方で、教育レベルは私立より低く、設備面や生徒へのケアについても懸念が見られます。
私立学校は教育水準が高く、英語のレベルも高いです。設備や環境が整っており、英語が苦手な生徒へのケアなども行き届いています。男子校や女子校があり、キリスト教系の学校が多いです。デメリットは学費が高額で、年間300万円程度は必要であることが挙げられます。平均年収が900万円弱のオーストラリアの中でもお金持ちといえる家庭の生徒が多く、金銭感覚が合わないシーンも多いでしょう。
留学に必要な手続き

4-1.入学条件と必要書類
入学条件は、学校によって異なります。一般的には英語力の証明が必要となるため、IELTSやTOEFL ibtなどを受けておきましょう。Year7に入る場合、IELTSは4、TOEFL ibtは31程度が目安となります。英語力が足りなくても、HSPという高校進学準備コースを受講することで入学が認められるケースも多いので、エージェントと相談しましょう。
また、一般的な必要書類は、以下の通りです。
・入学願書
・入学申込金
・パスポートのコピー
・日本の在籍学校の成績証明書(英文)
・中学の卒業証明書(英文)
・ガーディアンの指名書
・英語力証明
学校や州によって上記以外の書類が必要なケースもあるため、事前によく確認してください。
4-2.ビザの種類と申請方法
オーストラリアの高校に留学する際は、学生ビザが必要になります。
学生ビザを持ち続けるためには、政府が認定する学校のコースを週20時間以上受講し、出席率80%以上を保たなくてはなりません。有効期限は、コースが終わってから1~2か月後までです。学生ビザを取得すると、週24時間(2週間で48時間)まではアルバイトができるようになります。
ビザを申請するには、まずパスポートを準備します。2025年3月から制度が変わり、申請から交付受付まで2週間かかるようになったので、早めに取得しましょう。次に、入学許可書番号を確認します。これは学費を納めた後、学生ビザを申請する人のみに発行されます。そのほか、海外留学生健康保険、クレジットカード、メールアドレスが必要です。
学生ビザは、日本国内での申請であればプログラムが始まる4か月前から申し込みできます。通常、ビザ取得まで1か月ほどかかるので、早めに準備しましょう。
4-3.健康診断と予防接種
留学先の学校によっては、英語の健康診断書を求められることがあります。「文京区 予防診断書 英語」などで検索し、英語での作成に対応してくれる家の近くの病院を探しましょう。
オーストラリア渡航にあたり必須の予防接種はありませんが、破傷風や風疹・麻疹、水痘などのワクチンを接種しておくことが推奨されています。
費用と資金計画
オーストラリア留学にはどのくらいのお金が必要か、学費や生活費について解説します。
5-1.学費と生活費の目安
オーストラリア留学の学費に関する内容は下記の通りです。
項目 | 金額 |
---|---|
公立学校入学金 | 5万円 |
公立学校学費(1年間) | 140万円 |
留学エージェントの費用 | 60万円 |
航空券 | 12万円 |
留学生保険 | 24万円 |
学生ビザ申請費 | 16万円 |
ビザ申請用保険 | 5万円 |
ホームステイ手配費 | 4万円 |
ホームステイ費 | 140万円 |
空港送迎費 | 3万円 |
制服・教材費 | 5万円 |
合計 | 414万円 |
上記の金額は、あくまで目安です。
私立学校であれば学費が一気に高くなりますし、留学エージェントへの支払いが倍かかるケースもあります。一方で、LALALAは無料エージェントなので、利用時に手数料がかかりません。
航空券は早めに取れば金額を抑えられますが、直前になるほど高騰します。
生活費は、どの街に滞在するかや休日をどう過ごすかなどによって大きく変わります。1年間で、安ければ200万円、高ければ450万円ほどになるでしょう。
5-2.奨学金や資金援助の情報
奨学金は、政府・自治体系が支給するもの、学校が支給するもの、民間のものの3種類があります。ただし、いずれも大学生向けのものが多く、高校生向けは比較的少ないです。奨学金を受け取るには、成績表などを提出し、帰国後は報告書の提出や支援機関が実施する事業への協力などが求められます。
返済する義務のない給付型奨学金は、支給のハードルが高く、留学を通じて何をしたいのかなどを説明しなくてはなりません。返済義務が発生する貸与型奨学金は、申請条件がゆるく、資金の使い道についての制限も厳しくありません。
滞在方法と生活環境

6-1.ホームステイの特徴と注意点
ホームステイのメリットは、英語力が向上しやすいことです。学校では英語を勉強の一つとして学びますが、ホームステイでは現地の方とコミュニケーションの一つとして英語を使います。そのため、実際に使われている言い回しを学ぶことができる上、英語を通じて物事を知る経験もできます。
また、オーストラリアの文化について理解が深まることもメリットでしょう。渡航前は、オーストラリアといえば「コアラやカンガルーが有名」「南半球だから日本とは季節が異なる」といったイメージしかないかもしれません。しかし、ホームステイ先での生活を通して、オーストラリア人がどのように物事を考えているのか、どんな休日を過ごしているのか、どんなものを食べているのかなどを知ることができます。
注意点は、一人での生活ほど自由がないことです。ホスト先の家庭のルールにより、帰宅時間や寝る時間などが決められています。また、食事が合わない可能性もあるでしょう。一人での生活であれば毎食好きなものを食べられますが、ホームステイをするのであればホスト先の家族の食文化に馴染む必要があります。
6-2.学生寮やシェアハウスの選択肢
学生寮は、アパートやコンドミニアムなどに滞在する形になります。2~4人で1部屋となるため、同年代の友達が作りやすいです。ホームステイより自由度が高く、門限がないことも多いでしょう。しかし、自分の部屋がないためプライベートな空間はなく、常に人と生活することになります。自炊が必要になる点も注意です。
シェアハウスは、他人同士で1つの物件を借りてシェアする方法です。自分で募集を探し、家主と契約することで借りられます。入居や退去のルールは物件によって異なるため、事前に確認が必要です。自分の部屋があれば、プライベートを確保できます。しかし、管理する人がいないためトラブルになってもすべて自分で解決しなくてはなりません。
いずれも、大学留学ではよくある滞在方法ですが、高校留学で選択する人は少ないでしょう。
現地での生活に向けた心構え
オーストラリアでの生活は、どんなところに気を付ければよいのでしょうか。ポイントを3つ解説します。
7-1.文化の違いと適応方法
初めて海外に行く場合、何かしらのカルチャーショックを受ける可能性があります。例えば、日本人に比べてオーストラリア人の方が物事をはっきり伝えるため、向こうは普通のコミュニケーションのつもりでも、こちらは「嫌われているのかも」「怒っているかもしれない」ととらえてしまうことがよくあります。
他にも様々な理由から文化の違いを体験することになりますが、内容が何にせよ、センシティブにとらえすぎず「日本とは違うんだな」とありのままを受け取ることが大切です。「きっとこうに違いない」「日本のようにこうすればいいのに」と決めつけず、相手を受け入れましょう。
すぐに適応できない時は「○○という文化は日本にないから、慣れるまで時間がかかるかも」と一言伝えれば、相手もあなたのことを理解しようとしてくれるはずです。
7-2.安全対策と健康管理
日本は世界でも有数の治安のよい国です。オーストラリアもよいのですが、やはり日本にいる時よりも注意が必要になります。夜遅い時間は一人で出歩かない、人気のないところにはできるだけ近づかない、ブランド物を持ち歩かないといった点に注意しましょう。
体調管理も重要です。しっかり睡眠をとり、バランスのよい食事を心がけてください。食事が合わなかった時のために、お米やインスタント味噌汁などがあると安心です。シドニーなどの大きな街であれば近隣にほぼ必ず中華料理店があるはずなので、洋風の食事に疲れたら訪れてみるのもおすすめです。
7-3.コミュニケーションの取り方
日本では本音と建て前を使い分けたり、相手を正面から否定せずオブラートに包んだりすることが大切です。しかし、オーストラリアではもっとストレートなコミュニケーションが求められます。何かしたいことがあったりやめてほしいことがあったりした時は、しっかり相手に伝えましょう。
また、オーストラリアにはマイトシップという考え方があります。これは仲間意識のようなもので、誰かが困っている時は手を差し伸べるという文化です。あなたが困っている時はきっと周りの人が助けてくれるので、あなたも困っている人を見かけたら積極的に声をかけてみてください。
一つ覚えておきたいのが、オーストラリアでは誰かのミスにあえて皮肉的な冗談をいう文化があることです。これは相手を傷つけたいのではなく、笑いのネタにすることでよいコミュニケーションにつながるという考え方です。もしあなたが失敗をした時に何か言われても、それは揶揄されているわけではなく、親しみを込めているだけなので大げさにとらえないようにしましょう。
留学後の進路とキャリア形成

8-1.大学進学の選択肢
オーストラリアの高校を出た後は、大学に進学することが一般的です。日本の大学に進学する場合、英語力を活かして受験できる大学はいくつもあります。受験でTOEICやTOEFLなどの証明を出せば、英語の試験が免除されます。また、英語だけで受験できる大学を選ぶことで、受験勉強の負担を減らして自分の求める進学先に進めるでしょう。
英語力を活かして別の分野について学びたい、もっと海外で自分を磨きたいという方には、海外の大学に進学するという選択肢もあります。オーストラリアの大学は3学期制を導入しているところが多く、2月、7月、10月が入学タイミングです。
留学生がオーストラリアの大学に入る際、一般的には、まず8~12か月のファウンデーションコースを受けて、論理的思考力や専攻分野の基礎科目を学びます。また、ディプロマコースを受けて、専攻分野について大学1年生レベルの内容を勉強し、大学2年生に編入する方法もあります。
オーストラリア留学で培った英語力を活かし、アメリカやイギリス、カナダなどの大学に進学する選択肢もあるでしょう。国によって試験方法や入学時期は異なるので、早めに現地情報を調べてみてください。
8-2.留学経験を活かすキャリアパス
留学後のキャリアパスとして、英語を使った職業に就く方が多いです。エアライン業界や観光業界、英語教育関係の仕事は、想像しやすいでしょう。そのほか、日本にある外資系企業で働くという選択肢もあります。
日本語が話せることを武器にし、海外で通訳や翻訳の仕事をする方もいます。また、国連などの国際機関や全世界的に展開しているNGOやNPOで活動する方も多いです。
いずれにせよ、留学は英語を勉強することが目的ですが、その後のキャリアパスでは英語を使って何がしたいかが重要になるため、オーストラリアでの生活で自分の好きなことや向いていそうなことをぜひ探してみてください。
まとめ
オーストラリア留学にはお金がかかりますし、文化の違いなどから悩んでしまうこともあります。トラブルに巻き込まれたり嫌な思いをしたりする瞬間も、必ずあると言っていいでしょう。
しかし、前向きな気持ちで積極的に行動すれば、日本では得られなかった楽しいことも絶対に見つかります。留学しなければ出会えなかった人と交流でき、自分の人生を変えるような出来事に恵まれるチャンスもあるかもしれません。
ぜひ、自分の未来のためにオーストラリアの高校留学を前向きに検討してみてください。