前置き
世界には国によって、人によって、実にさまざまな文化や習慣があります。独特の文化で発展を遂げてきた日本はその代表で、日本に強く興味、関心を持つ外国人は日々増加を続けています。その日本特有の文化は魅力的な一方、日本の当たり前が世界、特に欧米文化とは異なることは多々あり、来日した外国人、どこか海外へ行った日本人が良くも悪くもそれぞれカルチャーショックを受けることはよくある話です。 中でも「チップ文化」はその代表格。そこで今回は、オーストラリアのチップ事情についてまとめたいと思います。
チップとは?
チップとは、日本では「心づけ」とよく表現されています。サービスを受けたことに対しての心づけ(感謝の気持ち)を実際の請求額よりいくらか多く支払うことによって示す、これがチップです。 一口にチップと言っても、チップに対する感覚は国によって異なりますし、支払う額も目安はあるものの、人によってまちまちです。前段しましたが、サービスを受けたことに対しての心づけ(感謝の気持ち)なので、適当な態度で接客されて不快に思った時にまで支払う必要はありません。 そもそもオーストラリアにはチップ文化があるのか?以下簡単にではありますが、国ごとのチップ文化について解説します。
アメリカ
チップが1番必要な国です。チップが必要な場所について後述しますが、そこに記載したすべての場所で必要です。一部のレストランなんかでは会計にチップを含んだ額で提示してくるので、チップを支払う・支払わないの選択肢が無い場合もあります。(ハワイのような観光地はチップ文化が無い人たちもよく訪れるので、そうしているお店も多い)
チップ文化に不慣れな人にとっては、チップをいくら支払うべきか?と悩まなくても良いという解釈もできますが、そういう人は大体英語にも不慣れな人。ドル計算だとチップ混みの値段かわからず、請求書を見ても英語がわからないので、チップを二重に支払ってしまうことも十分にあり得ます。 店員側としては、提示した額よりさらにチップをくれた=良いサービスに感謝しているという解釈になり、すでにチップはもらっていますと返金されることはありませんので、注意しましょう。
ヨーロッパ
チップは絶対ではありません。ただ、5つ星が付いているような高級ホテルや、サービスのしっかりしたレストランではチップを支払うものと理解しておきましょう。タクシーを使う際も、スーツケースのような重たい荷物の積み荷をしてもらった時などはお礼としてチップを払うのが一般的。
アジア
外国人をどこでも見かけるようになった日本でさえ、未だにチップを導入している場所は皆無に等しいです。もともとチップ文化が無いアジア圏の観光地では、チップをくれる外国人に味を占めてチップを要求するようになっているところもありますが、支払わなくて問題ありません。
サービスに対しての心づけではなく、外国人=チップくれると思い込んでいる人もいて、カヌーなどのアクティビティをした後に、特になにかサービスをしたわけでもない人がチップボックス持って寄ってくるということもあります。支払う必要が無いと思ったときは無視しましょう。
オーストラリア
本題のオーストラリアですが、チップは絶対ではありません。イギリスの文化を受けてのことか、ヨーロッパと似たようなイメージです。移民の国と言われるほど、さまざまな国の人が住む国ということもあり、チップに関するかっちりとした決まりはありません。ただ、オーストラリア人は若い人でもチップを支払う人が多いです。オーストラリアはチップを払わなくても良い国、と紹介する人もいますが、そんなことはありません。
収入としてのチップ
日本でも一部の高級ホテルやレストランだと、「サービス料何%」のような形で飲食代等とは別に会計に計上されるチップのような制度を取っているところもありますが、一般的には金額にサービス料は含まれている、サービス業である以上良いサービスを提供することは当たり前、という考え方です。
一方チップ文化のある国、特にアメリカでは「サービスは無料ではない」という考えです。また、アメリカはチップを受け取るサービススタッフ(レストランのウェイターやタクシードライバーなどの直接接客する人たち)の給料が低く設定されていることがほとんど。それは、時給+チップで稼げるからとそのような仕組みになっています。
サービス業をしている人たちはチップが無いと満足に稼げない人もいることと、雇い主もチップがあるから安く雇用できているので、チップを払ってもらえないと困ってしまうこともチップ文化が強い国の背景としてあります。
国によって違うチップ事情(働く側)
消費者が支払ったチップは誰がもらっているのでしょうか?それはどこの国もサービスをしたスタッフが受け取っています。しかしここにも国によって違いがあります。例えばフランスの場合、フランス料理のレストランで働くと、自分が担当するテーブルが決まっています。その担当したテーブルで発生したチップはその担当者がもらうのが一般的です。
これがオーストラリアだと、それなりに高級なレストランに行ってもテーブル担当になっているところもあれば、なっていないところもあり、バラバラです。そして、チップはオーナー以外の従業員みんなで分配するのが一般的。サービスに対してだけでなく、提供された料理や飲み物のトータルパフォーマンスに払われたチップ、という考え方です。
日ごとにチップを集計し、その日働いたスタッフで分配します。毎日分配するところもあれば、週ごと隔週など分配のタイミングは店によって異なります。また、オーストラリアもサービススタッフの時給がやや低く設定されているので、チップ分配の割合はサービススタッフの方がやや高くなることが一般的です。
オーストラリアでは、チップは良いサービスと思ってもらえたこと、収入として還元されることがサービス業のモチベーションになっています。
発音に気を付けましょう
ここでいうチップは英語ではTip。「欠ける」、もしくはフレンチフライのように油で揚げた食べ物をを表す英単語はChip(ポテトチップスもPotato Chipsと表記する)で、日本語読みすると同じ「チップ」ですが、発音が違うので注意しましょう。アジア人には特有の発音があり、アジア人との関りが少ない外国人だと、発音やアクセントが違うと全然理解してもらえません。
【場所別】オーストラリアのチップ必要有無と目安のチップ額
レストラン
オーストラリアでチップを払うシーンとして最もよくあるのが、レストラン。設定金額が安いお店から高級なお店まで、オーストラリア人は払うことが多いです。チップ額の目安は普通であれば5%、結構良かった10%、大変満足できた15%といった具合です。 オーストラリア人でも、学生の子や主婦の人など自分で稼ぎが無い人は良いサービスだと思っても無理して払わないですし、イマイチのサービスだったと感じれば払う必要はありません。また、セルフサービスのお店では払う必要はありません。あくまでサービスに対しての心づけなので、ラーメン屋や中華料理店などもオーストラリアでは気にする必要はありません。 オーストラリア国内には日本人経営の日本スタイルの居酒屋さんがよくあるのですが、飲み物・食べ物で注文する量が多いので、何回もサーブしに来ては下げ物をして、水の注ぎ足しやテーブルを拭いたりと、サービスを受ける頻度が高く、時間も長いので、オーストラリア人は大体チップを払います。 留学やワーホリで渡豪したら、きっとこういった居酒屋にお世話になる人も多くいると思います。スタイルこそ日本ですが、働き方や給料に関してはオーストラリア式。なので、給料とは別にチップを支給されることもめずらしくありません。
もし、チップをもらう立場になったら、ぜひ自分がどこかに食事に行って良いサービスを受けたと感じたらチップを払うことを心がけましょう。それがオーストラリア流の生活スタイルです。
カフェ
コーヒー1杯持ち帰りの時にわざわざチップは不要です。店内で食事をした時などに払いたくなれば払うという感じでOKです。払う場合も、チップ額にこだわる必要はなく、例えばお会計が$9の時に$10で払っておつりをチップという感覚。 ちなみにちょっと豆知識ですが、アメリカやヨーロッパ、日本でもそうですが、持ち帰りを英語でTake Out、もしくはTo Goと表現することが多いですが、オーストラリアではTake Awayと言うことが一般的です。お店の看板によく、Take Awayと書かれていますが、それは持ち帰り可能という意味と覚えておきましょう。※Take OutやTo Goでも問題なく通じます。
バー
テーブルに着席して店員がオーダーを聞きに来て、サーブしてくれるという一般的な飲食店の流れのお店ももちろんありますが、バーエリアに自分で注文しに行って、出来上がったものを受け取り、その場で会計をする、セルフサービスのバーも多くあります。 バーはケースバイケースで、例えばバーエリアにビール1杯注文するだけなら不要ですが、バーテンダーに好みの味を伝えてオリジナルでカクテルを作ってもらったら、セルフサービスでもチップを払うなど、自分がサービスに満足したらチップを渡しましょう。カフェ同様、チップの額にこだわる必要はありません。会計と支払額の端数をチップにするくらいの感覚で問題ありません。
ホテル
人によってはどこでもチップを置く人もいますが、いわゆる普通レベルのホテルやビジネスホテルは必須ではありません。5つ星のような高級ホテルではチップは払うことが礼儀というか慣例というか、当たり前のようなものとなっているので、そういった場所に宿泊する時はチップ用にお金を用意しておきましょう。 チップ額は人それぞれですが、ベルマンやポーターに$3程度(荷物の量による)。ハウスキーパーに$3~$5程度(枕元に置きます)。ルームサービスに$3~$5程度。ホテルの場合、ホテルに対してではなく、それぞれの係に対してチップを渡すので、少額を用意しておくと便利です。
タクシー
オーストラリアのタクシーはチップ無しで問題ありません。現地で人気のUberというタクシーサービスは、Uber利用後に登録したクレジットカードから自動的に決済されるので、ドライバーとの間にそもそも支払いのやり取りがありません。
ネイリストや美容師など、特別なスキルを持つ人に対して
これこそチップが発生しそうなものですが、チップを支払わない割合の方が多いようです。専属の担当者を決めていて、いつもお世話になっているのであればいくらか支払う方が良いかと思いますが、絶対ではありません。 なお、スーパーやコンビニ、ファストフード店、Take Away専門店ではチップの支払いは不要です。 オーストラリアのサービス業をしている人たちは笑顔でフレンドリーな人が多いので、良いサービスを受けたと感じることも多くあると思います。
チップの払い方/置き方
場所や決済の仕方で変わります。ホテルであれば各係に直接手渡しか、枕元に置いておくというスタイル。カフェやバーは、レジでお会計の時におつりは不要と言って、おつりをチップにする。もしくは、オーストラリアはカード社会(銀行のカードにクレジット機能、デビット機能が付いていて、どこのお店に行っても電子マネーのようにタッチで支払が可能)なので、現金会計をすることが少なく、チップが発生しないケースも多くあります。
日本のコンビニでよく見かける募金箱が、オーストラリアではチップボックスとしてカフェなどのレジ横に置いてあることがあり、そこに小銭を入れるやり方もよく見かけます。もしくは座っていたテーブルにいくらか置いたまま帰るというのも、チップの置き方としてよくある方法です。
また、レストランでカード会計を選んだ場合、クレジット決算の機械があるのですが、暗証番号入力の前の画面に「チップを入力したいですか?」という画面が出るように設定しているお店もあります。YESを選ぶと好き
な額入力できるようになっています。 「チップを入力したいですか?」というメッセージを見ていなくて、暗証番号を入力して多額のチップを払いかける、もしくは払ってしまうのはよくある話。気を付けましょう。
まとめ
いかがでしたか。留学やワーホリで初めてオーストラリアに行ったとき、きっと英語もよくわからず、接客されるまま雰囲気に圧倒され、当たり障りのないチップを置くことも多々あると思います。最初はそれでまったく問題ありません。英語やオーストラリア生活に慣れてきたときにレストランに行ったとして、チップを払うかどうか、払うとしていくら支払うのが妥当か、これをジャッジできるようになった時、それはオーストラリアに適応している証拠です。
ぜひ、オーストラリアの文化に染まってみてください。それがオーストラリアを感じる近道です。